元通りになんてできない

「歳の事を言ってもどうにもならんが…。
これも人にもよるし、おかれた環境にもよる。
5歳の差は、若い男の精神年齢では中々無理だと思うよ。逆に、男が上の5歳差なら、丁度くらいのことだ。それだけ、女性の方が大人だという事だ。
…女性からしたら、子供を見るような気持ちでいないといけなくなる。
そうなったら、寂しくないか?しばらくなら良くても、それがずっとだったら…、…母さんだって、同じ立場なら、しんどいと思わんか?頼れんのだから」

「そうですかね…。お父さんは私より8歳も上だから。
私はいつも安心でしたからね。考えた事も無かったけれど」

「まあ、わしがいいかどうかは解らんが、そういう事、あると思うよ?
一緒に居る人間には、安心とか、頼りがいとか、自然と求めるもんじゃないかなぁ…」

「そう言われれば。知らず知らずに、ですね」

「うん。夫婦は長丁場だからな…。好きから先が…大事だ…」

「信頼関係かしら?」

「まあ、夫婦で色々だな。
薫さんが言ってたぞ。
夫婦で互いをお父さん、お母さんて呼び合っちゃダメだって。それは子供からみた呼び方だからって。
わしらも昔みたいに名前で呼び合ってみるか?いいかも知れんぞ、な、靖子」

「お…お父さん…いきなり」

「だから、それだ。わしはお前のお父さんじゃないぞ、ハハハッ」

「もう。……俊夫さん。あぁ、やっぱり…何だか恥ずかしいものですね、随分呼んでないから」

「ああ。でも、たまにはいいもんじゃないか?年甲斐も無くドキドキして。いい刺激だ」

「フフ、そうですね、俊夫さん」

「靖子。はぁぁ、靖子靖子」
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