元通りになんてできない
それから幸元君とは顔を合わせなかったので、私は紙バッグを手に退社した。
「知里〜、帰ろう」
「お帰りなさい、鷹山さん。知里ちゃん今バッグを取りに行ってます。
今日ですね、良いことあったんですよ。連絡帳に書いてあります。
後で見てくださいね」
若い亜希先生は少し砕けているところがあって、親しく接してくれる。
「何でしょう、楽しみですね」
「おかあさ〜ん」
知里が飛び込んでくる。
「わ、元気。知里、帰ろう。靴履いて」
「うん。せんせい、さようなら」
「さようなら」
「有難うございました」
手を繋いで歩いた。
「知里、今日はなんか良いことあったの?」
「わかりません」
「そうか、良いこと…、うんとね…、誰かと仲良く出来た?」
「ともくんがえらいよって、せんせいがいった」
「そう、とも君偉かったんだね」
う゛〜ん、謎だな…。
連絡帳、見ないとよく解らないな、やっぱり。
アパートに帰り着き、荷物を置いた。
ご飯はOKだから、
「知里、お母さん今日はカレーがいいんだけど、知里もカレーでいい?」
「うん」
そうだ、幸元君のお弁当箱。
袋をパチパチ開けて取り出した。…?なんか、ちょっと重い?
食べ切らなかったのかも。
?でも、洗ったって言ってたような…。