元通りになんてできない

ハンカチを解いて蓋を開けた。あ。何、…。

容器は綺麗に洗ってあっただけじゃなかった。中に可愛らしい柄の小さい袋とメモがあった。
こんなモノを入れてあるから、棄てるなって連絡して来たのね。

『ご馳走様でした。旨かったです。完食しました。
娘さんにです。気に入ってくれるといいけど』

走り書きのように書かれていた。
クスッ。きっとやり慣れない事して慌てたのね…。

私はその小さい袋を持って知里のところへ行った。

「知里、これ何だろうね。あのね、お母さんのお仕事のお兄さんが、知里にって、くれたよ。
開けてみようか?」

「うん」

止めてあったシールをはがした。手を入れて引き出した。

「うわあ、うさたん。かわいい。みておかあさん」

それはフランスの絵本の白いうさぎと黒いうさぎの、白いうさぎの方のフワフワしたキーホルダーだった。

「本当だ、可愛い。保育所のバッグにつけようか」

確か一つは付けても良かったはず。

「うん!」

「無くさないように大事にしようね」

「うん」

急かされて付けた途端、知里はバッグを肩から掛けて、クルクル廻っている。
嬉しいのね…。はぁ。
私は少し戸惑ったが、もらっていたメールに返信した。

【鷹山です。娘に気を遣ってくれて有難う。凄く気にいって喜んでいます。早速、保育所のバッグにつけました。容器、洗ってくれて有難う
誤解が生じないよう、このメールはすぐ削除してくださいね】
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