元通りになんてできない

「知里、とも君もみんなも、ちゃんと座ったから偉かったのね」

「うん」

知里が巻き付くように抱き着いて来た。

「知里、偉かったね。ちゃんと座って」

頭をよしよしと撫でながら抱き上げた。…私は…こんなことでさえ、同時に信君を思って…涙が出そうになった。
もっと、もっと…。
時間が有る限り話をして、こうして抱き締めていたい。
寂しい思いを…、我慢ばかりさせてごめんね…。


「おかあさん、カレーたべようよ」

「そうだ、ごめん」

メソメソしてる場合じゃない。

「あ、知里…」

「てもあらったよ。ブクブクも」

「アハハ、偉い!偉い偉い」

また頭をよしよしした。

「じゃあ、スプーンを並べてください」

「はーい」


「知里、おかわりは?」

グーの手から、親指と人差し指を小さく広げる。

「ちょっと?」

「ちょっとー」

「はい、分かりました。はい、どうぞ」

食べる量もだいぶ増えて来た。
元気で大きく育って欲しい。でも、今のままでも居て欲しい…。


信君の両親との約束…。
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