元通りになんてできない
「あ、それね。どっちで捉えるかによって話の解釈が違うと思うのよね…」
「解釈の違い?」
「そう…。スタートなのか、ゴールなのか。
恋愛した結果の結婚は、恋愛が終わると捉えて、ゴール。と同時に、二人の人生、婚姻生活が始まるからスタート。
だからゴールでもスタート。どちらも同時に存在する感じよね。屁理屈っぽいね、こんな事言ったら」
「マナミ、あ、マナミって言うんですけど」
「彼女?」
「はい」
「マナミは結婚はただのイベントと捉えてますから。確かに、イベントに間違いは無いんですけど。内面も、ただのイベントだと思ってますから…」
「もう。若いんだから、なんでも嬉しくて楽しいのよ。自分がしなくちゃいけない事は解って来るわよ」
「…。そのカップ、自分のですよね?」
「あ、これ?子供っぽいでしょ?シロクマ、好きなの」
「そうなんですか」
「そう。だから凄い気にいっているの。それに大事なものだから」
「鷹山さ〜ん。鷹山さ〜ん?」
「わっ、呼んでる」
振り向き慌てた私は、ドア付近に移動していた幸元君に顔からぶつかってしまった。
「おっと、大丈夫ですか」
カップを持った手は、こぼれそうなコーヒーを避けるように体から離し、空いている左腕で支えてくれた。