元通りになんてできない
もう一つのプロポーズ


「結婚するか。そろそろ」

「…あ、え?うん。うん!……フフ、なんか良いね、こういうの」

「ん?」

「こんな風に、家で一緒にご飯食べている時に、自然に言われるのって、いい凄い好き」

「改めて面と向かってとか、サプライズとか、俺には無理だからなぁ」

「私も、サプライズとか、過剰な演出、好きじゃないから。一番嬉しい言われ方だった」

「そうか?まあプロポーズっていう、改まった感じが好きじゃないしな」

「いいよ。解ってるから」

「指輪、買いに行くか?次の休み」

「指輪は無くてもいいよ。私、普段からアクセサリーも好きじゃないし」

「知ってる。それはそれ、これはこれだ、アホ。一緒に見に行って薫の気に入ったの買おう?」

頭を撫でられた。

「ホントに、いいのに…」

「バ〜カ、俺が買いたいんだよ。その代わり、制限無しには買えないから程々にだけどな?」

「解ってる、…有難う。もう信君、アホ、バカ、言い過ぎ。別に気にならないけど」

「意味は無い」

「知ってる」

「悪いな…」

「…何が?」

「お前、飯作るの好きなのに、俺好き嫌いがあるから。今日も、いつもだけど、作りたい物作れないだろ?」

「そんな事無いよ?気がついて無い?今日だって信君の嫌いな物、入れてあるよ?」

「うっそ…」

「本当。小さ〜く小さ〜く刻んで、解らないように混ぜ込んであるよ?
ほら、見て?…大っ嫌いな椎茸…」

「わっ、もぅ〜…。知ったら食えないかも…」

「もう。そこは子供じゃ無いんだから、食べないと駄目じゃない?将来、子供が生まれた時、お父さんとしては困るよ?」

「…え、お前、…まさか」

「え、違う違う。まだそうじゃないから」

「そうなん?ま、いつ出来ても俺はいいんだけどな…」

…。

「…ちょっと。信君…待って…、まだご飯済んでない…」

「…俺は…薫の方がいい。ずっと一緒に居ような、薫」

「うん。絶対よ?絶対、ずっと一緒なんだからね?」

「ああ。何も変わらない。ずっと一緒だ」
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