元通りになんてできない

「ごめん、幸元君。シャツ汚れたかも。ファンデーションとか、リップとか付いたかも。どうしよう…」

トクントクン、煩い。

「…大丈夫、だと思います」

はっ。離れなきゃ。ウッカリ顔だけ上げて、くっついたまま話してた。

「ごめん、急ぐから行くね。汚れてたら言ってね」

ドクドクドクドク、益々煩い。

「…解りました」

「あ、カップ、置いといて。後で来て洗うから」

「はい…」


はぁ、まずい…、まずいかも知れない。飛び込んで来たのをただ受け止めただけなのに…。
…やばい。
このまま、もう少し、このまま、くっついたままで居たいと思ってしまった。



うわ、うわ、どうしよう…。
わざとじゃないけど、ビックリした〜。シャツ、汚したよね…、多分。
営業に出るから困るよね…。
ファンデーションもだけど、リップが付いてたら、対面した時、印象…、まずいよね。

シャツ買って来ようかな…。
あー、サイズが解んないか…。あ、でも…。


「ああ、鷹山さ〜ん?こっちこっち」

「はい、すいません。今行きま〜す」

「ちょっとこれが解らなくて…」

……近くにお店あったかな。
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