元通りになんてできない
チケット買わなくっちゃね。
動物園の入口で知里を抱いて支払いをしていると、幸元君がサッと知里を抱き上げた。
「わー、たける。たかい」
「恥ずかしがらないし、大丈夫そうなんで、抱っこしてますよ」
「有難う、助かる」
「たける、たける」
「…」
「大丈夫、呼びたいだけだから、適当でいいよ?」
「解りました」
フフ、ホッとしてるのかな。
「さあ、入ろうか?」
自然の流れで合流してこうして動物園まで来てるけど、大丈夫なのかしら…。
そもそも、どこかに出掛けていたんじゃないの?
心の声が聞こえたみたい。
「ドタキャンされました、マナミに。あっちが、今日は絶対空けといてって言ってたのに、寸前の時間になってキャンセルですから…」
「買い物か何か?」
「はい、欲しい服があると言ってたんですけど、よくなったみたいです、行かなくても」
「そう。お姫様は別の御用が出来た訳ね」
「そんなとこだと思います。早めに連絡してくれたらいいのに…。ギリギリですから。電車に乗った時なんですよ?連絡が来たのは。って、愚痴っても仕方ないけど。
鷹山さん、今日はずっと知里ちゃんと二人ですか?
旦那さんは後からですか?だったら僕はお邪魔ですね」
あ…。
「あのね、…その事なんだけど、…信君は来ないの、来れないんです…」