元通りになんてできない
「おかあさん、たけるは?」
「ん?たける君はね、今、悩んでいるのよ。うんとね、知里が、おさるさんかキリンさんか決めたみたいに」
本人が聞けば、なんて例え方だろうと思うだろうが、今は仕方ない。そもそも私達の話した事は知里には説明が難しい事だから。
突然だった。
何かを吹っ切ったようにいきなり幸元君が言った。
「よし、おさるさん見に行こう」
「たける、おさるさん」
「俺はさるじゃないぞ〜」
「キャハハハッ」
くすぐるような素振りをして見せるから知里が逃げるように暴れる。
「知里、落っこちる。下りて歩こう」
「うん」
知里の手を取り繋ぐと、たけるも、と幸元君と手を繋いでしまった。あ。
…。見た目、年上女房の親子じゃん、大丈夫なのかな…。
こんな人出の多いところ、まして休日。誰が見てるか解らない。
幸元君にとって、決していい状況ではない。
「幸元君、駄目じゃない。手、放していいから。誤解される元よ?やっぱり私達と一緒じゃない方がいいと思う」
「鷹山さんさえ良ければ、このまま一緒に、駄目ですか?偶然会って、偶然動物園に行った。
事実なんだから誤解にはなりませんよ。ねえ、知里ちゃん」
「ねえ~」
「もう…、真似したがるから、何言い出すか解らないわよ?」