元通りになんてできない
初めまして
「あっ、おはようございます」
…びっくりした。
「あ、はい。おはようございます」
水が飲みたくて給湯室を探して来た。まさか人が居るとは思っていなかった。誰と会っても初対面だ。
「あの、え〜と…、今日からお世話になります、幸元猛と言います。宜しくお願いします」
「はい。丁寧なご挨拶、有難うございます。
私は幸元さんより半年くらい先に入社しました。仕事はまだまだの事務員です。
あ、ごめんなさい、鷹山と言います。こちらこそ、宜しくお願いします」
給湯室でポットのお湯の準備をしていた。
今日から新しく幸元猛という人が来る事は知っていた。
随分背が高いんだぁと思って見ていた。私も小さい方では無いけど、かなり高いと思った。
朝のミーティング用にコーヒーを準備する。
「幸元さんは、ミルクもお砂糖も、あり、あり、でいいですか?」
「ありあり?あー、えっと、あり、無し?で、お願いします、すみません」
「あ、ごめんなさい。何か変な聞き方して。じゃあ、ミルクのみでいいですね?」
「はい、すみません、そうですね、それでお願いします」
「了解です。もう覚えましたからね」
…。
「あの?」
「あ…あの…聞いたら駄目ですよね?鷹山さんは、えっと…、後半ですか?その…」
「あ、年齢の事よね?大丈夫ですよ。前半です。フフッ。ごめんね、有難う。二十代にしてくれたんですよね?前半です。30だから、前半ね」
「すいません、何だか…」
照れくさいのか頭を掻いている。好青年て感じがする。
「ううん、全然、大丈夫です。いくつに見える?なんて質問返ししないから安心して?そんなこと言われたら困りますよね?
生きてるんだから、年齢が増えていくのは当たり前だし。って思う事にしてるの。
あと聞きたい事はありますか?
…聞きずらい事って言ったら…、そうね…、結婚していて、三歳の女の子が居ます、ってくらいの事になるのかな?」