元通りになんてできない
「解る、ような、気がする」
「おかあさん、やきそば」
「ん?はい、このくらい?」
「うん」
「家庭恋しさ、みたいになってるんじゃない?
今、正に、結婚に直面してる訳だし。意識の中にあるんだと思うよ?」
「…まあ、家族っていいなあと、漠然と思ってるかも知れないです」
「それを今から作っていくんじゃない。自分の家族をね」
「……」
「ごちそうさまでした」
「ご馳走様でした」
「さて…、キリン見て、かばと象とレッサーパンダ。
後、ふれあいコーナーでうさぎさん。こんなものかな?
全部まわらせたら疲れてしまうもんね〜、知里?」
「ぐったり〜」
見た後は疲れるという意味で体を曲げて疲れて見せた。
「そう、ぐったりね」
「いいじゃないですか、見られるだけ見て回りましょうよ。知里ちゃんが疲れたら、俺がおんぶなり肩車なり、しますから」
「駄目よ、駄目駄目。最初から、おんぶねだられる事になるから。
歩ける時は歩かせないといけないし。そんな事になったら悪いから」
今日だけなら済んでも…、いつもおんぶや肩車が出来る訳じゃないから。…今後、私が困る。
「知里ちゃんくらいの重さ、なんて事ないですよ。鷹山さんをずっとおんぶするわけじゃないですから」
「ちょっ、幸元君…。そういう事じゃなくて…確かにそうだけど。そこは言わなくても」
「猛でいいですよ」
「え」
「知里ちゃんも呼んでますから、たけるって」
「でもね…」
「今日だけ、呼べばいいじゃないですか?知里ちゃんも色んな呼び方を聞いて、迷わなくて済むし、統一した方が良くないですか?」
確かに、一理あるけど。
「…じゃあ、猛君で。いい?今日だけ」
「はい。 じゃあ行きましょう。キリンからかな?知里ちゃん」
「もいっかい、おさるさん」
「解った、おさるさんね」