元通りになんてできない
金曜日。
上司に明日から挙式の為、北海道に行く事を改めて伝えておいた。
まあ、何もないとは思うが。
土産、期待してるぞ、と言われた。毛蟹なんかいいな〜と、さりげなくを装い言う。
そんなもん、買う為に行くんじゃない。とは言えない。
ため息の種が増えるじゃないか…。
あれから、鷹山さんとは、普通だ。
と言うより、鷹山さんは無かった事にして、接しようとしている。まあ、そうだろう。…結婚前の一時の迷い、とでも取ったかも知れない…。あれだけ、結婚は解らなくなったと相談にもならないような愚痴を吐いていたんだから。…愚痴か、愚痴でもないんだ…。
俺は無かった事にはできない。
したのは俺からで、それには意思があったから。
会社に来たくないと思っている事だろう。来れば俺と顔を会わすから…。
状況が許すなら、とっくに辞めている事だろう。
鷹山さんには生活があるから、辞められないだけだ。
気まずい相手がいるところで、好き好んで仕事をしたい訳が無い。
はぁ…申し訳ない。
あの日、慌てて玄関を後にした時、チラッと見えた写真立て。
三人で写っているものと、旦那さん一人のもの。…そして鷹山さんと二人、仲良く寄り添っているもの…。
男らしい強さ、優しさがある人のように見てとれた…。
益々、俺は…、心が痛んだ…。