元通りになんてできない
挙式当日。
カラッと晴れた良い日、とはならなかった。
南から台風が近づいていた影響もあり、雨にならなかっただけでも良かったくらいだ。
どんよりと曇り、風があり、まさに嵐の前と言ったところだ。
曇った俺の心と同じだ。
俺…、神様に宣誓していいのか…。
普通の人はそんな事考えず、儀式の一つとして流れの中、当たり前に誓うのだろう。
なんだか「誓います」って言いたくない…。
言えない…。
葛藤だけが永遠木魂していた。
「…することを誓いますか?」
「………誓います」
俺の変な間は、緊張のせいだと勝手に思われたようだった。
親戚は違和感だとか、感じる事などない。そんなセンサーは持ち合わせていない。
こうして式を上げに来ている。
内側にどんな気持ちを抱えているかなんて、知るよしもない。
幸せ一杯、絶頂だと思っているだろう。
はぁ、これから馬車にも乗らなければいけないなんて…。…。益々曇る。
なんとかドレスに体を合わせられたマナミは、これ以上ない程喜んでいる。
当たり前だ。
結婚、今日は最良の日なのだから。
人目にバカップルだと言われるくらい、浮かれても許される日だ。
ごめん…、俺は表面上だけでも一緒に浮かれる事ができなくて。