元通りになんてできない


あ、ごめんなさい、結婚してようが子供が居ようが興味は無いわよね、…そうね…あとはスリーサイズと体重を聞くのは無しですよ?なんてね。尚更興味は無いわね。あ、身長なら聞いても大丈夫ですよ?
幸元さんは確か独身で25歳ですよね?」

「…はい、そうです」

「あ、勝手に調べたんじゃないですよ?誤解しないでくださいね。あれ、あれです。名簿カードを作成したから、だから知ってるだけですからね。いきなりペラペラごめんなさい。でも、こんな話はハラスメントになるのよね…」

「…いいえ。何も気にしないでください。お、僕は男ですから」

歯切れの悪い俺の話し方を気にしたのだろうが、原因は自分の事でじゃなくて、目の前の鷹山さんという初対面の女性に、心奪われていたからなんだけど。

はぁ。それが…、なんだよ、いきなり…。
年齢だけでも知りたかったから聞いたのに…それが。柔らかい表情で、結婚してます、子供もいます、なんて、知りたくない事まで教えてくれて…。
…指輪してなかったのに。
何も出来ないまま、もう完全に撃沈じゃないか…。

この短時間で惹かれてしまった。ま、一目惚れだな…。
俺って惚れやすいのかな…。でも、会社に殺されてないっていうか、ちゃんと表情のある人だったから。
年上なのに俺に丁寧な言葉遣いをしてくれて、挨拶で頭を下げてくれ、好みのコーヒーを覚えたと言ってくれた。人として社会人として、出来て当たり前なのだろうが、相手が年下だと解っていると、上から目線の人が多いモノなのに。
名前も…君と言わず、さん付けで呼んでくれた。

前職から同じ業種の転職でここに来たが、前の会社からここに来て良かったと思った。こんな人が居てくれる職場なら、雰囲気のいい会社だと思った。
…あんな横柄な態度を取る奴が居る会社…、辞めて良かった…。
鷹山さんになら、悩みが出来た時、愚痴や弱音を聞いて貰えそうな気がした。
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