元通りになんてできない
平静を装う為に
「いや〜、色々とみんなに土産を悪かったな〜。
土産買いに行った訳じゃないのに。
どうだった式は?うん?男でもウルッときたんじゃないか?感動して」
俺は上司に帰った報告とお礼の挨拶をしていた。
「いや、そうでもないです。…割と冷静でした」
「嫁さんは?号泣か?感動で」
「いいえ、泣くどころか、まあ…、ずっと喜んではしゃいでましたね」
「そうだろそうだろ。まだ年齢も若いんだったよな。
そりゃ、何しても、嬉しいばっかりだろう。
現実味なんてありゃしないさ。遊びと一緒だ、遊びと」
俺に一歩近づき、少し小声になった。
俺は少しのけ反り半歩下がった。
「何をしても可愛い、何もしてくれなくても許せるのは、最初だけだぞ?
結局、可愛いだけじゃ駄目だ、何もしてくれないのはもっとしんどいもんだって、思うようになる。
まあ、お前のとこは大丈夫だろうけど…。
そうなったら…、結婚生活なんて、こんなもんだと諦めろ。続けていくんだったらな…。
な〜んてな。…スピーチ替わりだ。
ま、頑張れ」
バンッと背中を叩かれた。
経験で言ってるのか?この人は幸せな結婚生活、おくれてないのかな?しんどいのか…。
せめて土産くらい、蟹デザインのお菓子にせず、本物の毛蟹を贈った方が良かったかな…。