元通りになんてできない

「気になってる事から聞くけど…」

ゴクッ…。コーヒーではない。
俺は唾を飲んだ。

「渡したシャツは駄目だった?サイズ合わなかった?」

「はっ、ぇえっ?」

思わず変な声を出してしまった。当然、来るだろうと思っていたことと違ったからだ。

「シャツ。クレリックは好きじゃ無かった?慌てて買ったけど、白いカラーとブルー、よく似合うと思ったんだけど」

「いやいや、それは…」

「やっぱり、駄目だったのね…」

俺は不謹慎にも笑ってしまった…、話ってこの事か…。

「違います。サイズもピッタリ、色もデザインもバッチリです。クレリック好きですから。ただ…」

「ただ?」

あの日は気にする商談も無かったから、着替えずに持って帰った。
俺の為に昼休みを潰して買って来てくれた事が嬉しかった。
一日中、気持ちがザワついた日だった。

家で袖を通して、腕が短いとか、首がユルユルとかもなく丁度良かった。
柄にもなく鏡の前に立って、前から横から斜めからと確認した程だった。
何だか着るのが勿体ないと思った。
買って来てくれた袋に入れ、大事に仕舞った。

「勿体なくて…」

「勿体ない?」

「はい」

「……」

「仕舞ってあります。大事に」
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