元通りになんてできない
俺のストレートな物言いにか、それとも本当は気に入らなくて着ないのを誤魔化したと思ったのか解らないが、絶句されて仕舞った。
「いつもしてる濃いブルーのネクタイとも、良く合うと思ったのに、…なんだか残念」
はっ、気に入らなかった、サイズが合わなかったと誤解してる。…そういう事なんだ。とにかく、着てくれば納得してくれるんだな。
「そのうち着てきますから、ちゃんと。すぐ着てくるのは、…なんだか気恥ずかしかったので、すいません」
「いいのいいの、結婚もしたんだし。奥さんの趣味じゃなければ棄ててくれていいからね?
無理しなくていいよ」
「そんな事しませんよ、俺のものなんだから。それに、奥さんは自分のファッションにしか興味ないですから。
今はなんだかネイルアート?に嵌まって…、家事も益々そっちのけです。
…あんなにデコった爪で、何ができるんでしょうね、家事の」
「お洒落が好きなのね。女の子らしいじゃない。
…私はその点ダメね。ネックレスも指輪の類もつけるのが嫌だし。ネイルもね…、ただ塗るだけで息苦しい気がするの、爪なのに。塗って塞がれると、抑えつけられたような気がして、苛々するのよね。神経質なのね、きっと。
だからアクセサリーも拘束されたみたいでダメなんだと思う。
時計は好きなんだけど、何だか勝手な我が儘ね、アハハ。…」
家事をしようとしないマナミはお洒落か。良いように言ってくれたって気遣いが解った。
家事<お洒落だよな、多分…、一生。