元通りになんてできない
「…前のようには難しいかも知れない。…元通りなんて」
えっ。
「私は無かった事にするから。
折角、日々の色々な話が出来て、仲良くというか、気が合って話が出来ていたのに。
どこかギクシャクするのは…、暫くは仕方ないのかも知れないけど。
この会社は小さいから、転勤もないし、部署替えもない。
…私みたいなのは、次の仕事、中々見つけられないから、辞める訳にはいかない…。
一人ならね、どうでもいいけど、知里と頑張らないといけないから。顔合わせたくないだろうけど、そこはごめんね」
「いや、やめてください」
「え」
「いや、違います、違います。謝るのは、止めてくださいと言ったんです。
言葉足らずですみません。
その、……原因は俺ですから」
「……」
「俺も転職したばかりだから、今は直ぐに動く事も難しいですから…、すいません」
「何言ってるの?貴方は新婚さんよ?そんな人が、今、転職なんかしちゃダメよ。
…でも、良かった」
「良かった?って…」
「そう。あれはあれとして…。こうして面と向かって、話が出来てるから」
「……」
「大丈夫、また戻れるわよ、…同僚に。話は済んだわ。今日は有難う。
じゃあ、迎えがあるから」
あ、鷹山さん…。
声を掛ける間もなく、鷹山さんは帰っていった。
俺は、呼び止めても届かない心の中で呼んでいた…。