元通りになんてできない
ボーナス<会話
今日はボーナス支給日!
本日の仕事も片付いた。
帰り支度をして、お先に失礼します、と声を掛けた。
外に出たところで、帰って来た幸元君と鉢合わせた。
幸元君、今は本人たっての希望で、君呼びになった。
「うわぁ、…びっくりしたぁ。ごめんね、大丈夫?お帰りなさい。お疲れ様でした」
「ぉおおっと、危なっ。大丈夫でした?鷹山さんは帰りですか?」
お互いに両手を出して衝突を回避しようとしていた。
「うん、ごめんね。なんかいつも先に上がってるみたいで」
丁寧な言葉遣いはしなくていいですと強く言われ、最近は少し砕けている。
「そんなの、気にする事じゃないじゃないですか?早退してる訳じゃないんだし。普通に上がる時間なんですから」
「そうなんだけどね。まだみんな当たり前に仕事してると思うとね、なんだか…。
晩ご飯作って食べてるとね、まだ会社で仕事してるんだぁと思って、悪い気がしてくるのよね」
「…そんなの。何も気にする事ないですよ。帰ったら何をしようと、もうプライベートなんですから」
「でも、ごめんね」
「いやいや、全然、気、遣う事じゃないですって」
「ボーナス出たね。今回は気持ちだけど」
「そうっすね」
「なんか買うの?」
「いや、特にでかい買い物の予定も、…まだ無いっすね何も」
「あ、じゃあ、あれかな?結婚資金とか、で、貯金とか」
「ああ…、それは無いっすね。呑気に言ってますけど。結婚は現実味が無いです。しないかも知れないし、…出来たとしても、ずっと先のような気もします」