元通りになんてできない

マナミの通っていた料理教室はナントカのナントカ風ナントカ、という料理ばかりで、毎日作るような料理を教えているところではなかった。
習ったからといって、一度でも腕前を披露した事も無かった。
最初から解っていた。
出来た美味しい料理を食べてワイワイお喋りをしに行きたかっただけだ。料理教室は料理やってますアピールの為だ。

…要らないなら棄てたらいいと言う言葉。猛君にだって聞こえていたはず。
食べ物を粗末に考え、その食べ物を買う猛君のお給料だって重く捉えない。

働いてもらったお金をなんだと思っているのか、…ついうっかり出た言葉だとしても、日頃からそんな頭でいると言うことだ。

一人目の子供で、なんでも手を掛けすぎた。親のせいね。自分でさせなかったから。
お姫様気分で育ってしまった。あの子にとっても不幸な事だ。

はぁ、…どうしたものか、いつまでも、このままではいけないし。
もう少し年齢が上がれば自覚が出来てくるかしら…。性格が変わらないなら考え方でもちゃんとしてくれたら…。

残ったものはタッパーに入れて私が持って帰ろう。どうせ食べやしない。
食器を洗い、片付けて、ゴミを出して来た。

マナミがシャワーから出て来た。

「あれお母さんカフェオレは?」

「マナミいらっしゃい」

「何?」

「いいからいらっしゃい」

ミルクパンを出した。

「いい?」

マグカップに牛乳を入れそれを鍋に入れ火にかけた。コーヒーの粉をすくってカップに入れた。お砂糖も。
沸いた牛乳を注いだ。

「はい、たったこれだけよ。あなたの飲みたいというカフェオレ。出来るでしょ?
出、来、る、でしょ?」

「…いいよ別に」

「なに?」

「いいよ、別に。自分でしなくても。お店に行けば買えるし、カフェに行けば飲めるし」

限界かしら…。マナミの頬を叩いていた。

「痛〜い、なに?お母さん、いきなり」

「あなたが店で買うカフェオレは一杯いくらなの?そのお金でこの牛乳の値段なら二本買える。2リットルよ」
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