元通りになんてできない


「ただいま」

居ないか。ふぅ…。
まあ、居ないのもいつもの事だけど。
風呂、溜めるか…。ネクタイを緩めながら浴室に入った。

おっとーっ。
脱衣所がビチャビチャだった。はぁ、…まあ、いつもの事だ。靴下が…。
着替えるか…。
あー、飯。何作ろうかな。マナミは食うのかな。

連絡入れてみるか。
俺はメールをして、着替えていた。


ブーブー…。マナミか?

【しばらく杏子のうちにいるから。 マナミ】

…しばらくって、どのくらいだ。急に、なんかあるのか?
お義母さんは何か知ってるかな?聞いてみるか‥。

RRRRR…。
出た。

「あ、猛です。あの、マナミの友達で杏子ちゃんていますか?
あ、はい。そうです。
それでしばらくその子んちに居るからって連絡があって…。ええ、はい、…はい。
あー、…解りました。はい、いえ、俺は別に。
…はい、大丈夫ですから」

はぁ…そういう事か…。
俺は今朝の、出勤後の事を聞いた。

気まずい相手は母親だろうに…。
別に此処に居ても顔を合わせる事も無いのに。ここに居る事に居づらい事なんか無いはずなのに…。まあ、朝、会うか。
ちょっと言われて、やる気になるどころか、ますます、逃げる方を選んだのか?


ピーピーピー。おっと、風呂。

はぁ、マナミ…、前進するどころか後進か…。
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