元通りになんてできない


私は実家に向かった。

ピンポンピンポンピンポンピンポン…。

「は〜い」

「お母さん、私、マナミ。開けて早く、開けて!」

「マナミ…。ちょっと、マ、マナミ、待ちなさい、落ち着きなさい」

ドカドカと上がりながら言う。

「返して!」

「何?いきなり」

「お母さんでしょ?猛のところから持って帰ったでしょ?
私の郵便物。返して!」

母の顔が曇った。
封筒を出してきた。

「やっぱり」

引ったくるように取り上げた。

「黙って勝手に持って帰ったのは、悪かったわ、謝るわ。
冷蔵庫の中身、確認しに行ったら、テーブルの上にあって…、とにかくマナミに事情聞きたかったから…、思わず持って帰ってしまったのよ。それでこれ、…大丈夫なの?」

「何が?」

「何がって…、これよ、利用明細書って…。借りたからこんなのが送られて来るのよね?」

「大丈夫、何でもない」

「何でもないって…、おかしい言い方。第一、これ、結婚する前ってこと?名前、旧姓だから…、まだ辞める前、仕事してる時に作ったの?」

「もう、色々…、うるさい」

「うるさいって…。何も解らないから…、いくらか解らないから、心配して聞いてるのよ?
一体いくら…、返すのは…いくらなの?」

「返すのは少しずつだから大丈夫なの!」

「大丈夫大丈夫って言っても。あなた、今、仕事してないじゃない。猛君はこのこと知ってたの?」

「…知らない。言ってないし。明細書が届いたから…、知ったと思う。
…それで、…猛から連絡が来たから」
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