元通りになんてできない

「何言ってるの?」

この子…もう…混乱して訳が解らなくなってるのかしら…。

「何言ってるの?あなた達、式もあげたし、披露宴もしたじゃない」

「でも、…籍は入れてない。マナミが婚姻届、出しに行ってないから」

「…」

聞き間違いかしら…、この子、今確かに籍は入れてないって…。

「マナミが出しとくよって言って、出してないから」

「…。…どういう事?どういう事なの…」

「だから、言ってるじゃん。届けは出してないの。…猛には言わないで、黙っといて、絶対。絶対言わないで!」

「…何?…一体、……解らない…、お母さんにはあなたの言ってる事、意味が解らないわ…。お母さんの方がおかしくなりそうよ…」

「私から猛に話すから、お母さんは言わないで」

「出してないって…、そんな事、…理由を教えなさい。教えてくれないと…、黙っていられる事じゃないでしょ?」

「だから、言ってるじゃない。最初から結婚してみたかっただけだって。結婚生活がしたい訳じゃないって。夫婦になりたかった訳じゃない」

「…マナミ、あなた…、今更何を言ってるの?そんな…、猛君を騙した事になるのよ?
あなたのしてる事は…、詐欺と同じよ?…式の費用だって、あなたがねだってねだって買って貰った婚約指輪だって…。指輪…、指輪はどうしたの?まさか…」

「買い取りセンターに持って行って、とっくに売ったよ。ネイルに…」

バチーンッ。
マナミの頬を張った。もう、我慢出来なかった。怒りと情けなさ。ガタガタと震えが止まらない。

「籍に入って居ないのなら別れなさい!…なんだと思ってるの…。
あなたのような…。…あー…なんて事を…。猛君に申し訳もできない…、なんて酷い事をしたの。ふざけるのもいい加減にしなさい!」
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