元通りになんてできない
夜、俺はマナミの実家に来ていた。
連絡を受けた感じから、両親にとってただ事ではない事だとは察した。
開き直ったマナミの態度には不快を覚えたが、こんな事もマナミならあるんじゃないか、そう思うと、腹が立つ気持ちにもならなかった。実は俺が一番マナミの性格を把握していたのかも知れない。
イベントだけの結婚。怒らない俺は、どんな奴だと思われてるだろう。普通は怒鳴り散らしたりするような事だから…。最初から気が無かった、そんな結婚だったと悟られたかも知れない。
お義父さんは俺の手前もあるのだろう。我慢し切れずマナミに手をあげた。
あんなに穏やかな人がだ…。
それほど可愛がって育ててきた娘のした事が許せなかったのだろう。
こんな俺に、お義母さんと二人で手をついて謝る。
俺は俺で、マナミとの結婚は諦めてしたものだから、こんなに謝られても…正直困る。
式、披露宴の費用、指輪の代金は返すからと言われた。俺にとって費用や代金は大金だ。
でも…どうでも良かった。
しかし、どうしてもと懇願され、受け取る約束をさせられた。
俺はバツのつかない離婚をする事になった。思えば社会保険の手続き…忘れていた。俺もいい加減な結婚だ。
部屋は引っ越そう。
確認したら、もと居た部屋はまだ空いたままだと言う。俺は住み慣れた“独身時代"の部屋に戻る事にした。
こうなってしまうと、この半年、何をして来たのだろう。意味の無い、何も残らない生活だった。過ぎた時間が、ただ空しいだけだ。
俺は実家の親に説明をした。
なんて事だ…。恥ずかしい、と嘆かれた。