元通りになんてできない
始末
多く無いと思っていたが、片付けてみると荷物は割とあるもんだ。
マナミの物はもう無い。
というか、必要な物はとっくに持ち出していたから、何か出てきたら棄ててくれということだった。
短い間でも、一緒に暮らしていたら、感慨深い気持ちになるんじゃないかと思ったが、そうでもないものだ…。
俺は冷たいのかな…。
食器を見ても、マナミが作って一緒に食べた訳じゃないから、思い出すモノも何も無い。
一緒に使ったモノは嫌だから棄ててしまうというのはよく聞く話しだが、そんな気も起こらない。
…ベッドだな。
ベッドだけは、処分しよう。たまに並んで寝ていただけとはいえ、今後、使いたくはない。
考えてみたら、マナミは夜中に帰って来たり、朝方帰って来たりと…。
随分、自由にしていたな…。
普通、旦那なら、帰らない理由を聞くだろうし、怒ったりするだろうが、帰らない連絡はもらっても、その理由まで聞いた事が無かった…。興味が無かったからだよな…。
何も聞かれない、そういうのは寂しい関係だよな…、一般的には。
マナミが何していても興味が無い、関心が無かったんだ…。
結婚生活はしたくないというマナミの気持ちを知らなかった訳だから、煩くしない俺はやっぱり冷たい人間に見えていただろう。
それとも、口煩くない旦那だから、ラッキーとでも思っていただろうか…。…夫じゃなかったんだよな。
俺は詰めた段ボールを、部屋の玄関口にまとめた。