元通りになんてできない


「聞きましたよ、知里ちゃんお母さん」

知里を迎えに来た私に、いきなり亜希先生が言って来た。

「お世話になります。…何でしょう?」

「クリスマス。大変でしたね」

小声になった。

「あー…。そうですね、まあ…」

「知里ちゃん、サンタさんにお願いは難しいって」

先生に言ったのね…。

「…はい。何が欲しいかちょっと探りを入れようとしたんです。そしたら、頼み事が難しい事ばかりで。結局、解決にもならない…、苦肉の策だったんですけど」

「お父さんのお墓参りに行かれたんですよね」

「はい、それで、こっそりプレゼントを持って行って隠しました。サンタさんのプレゼント、そこで渡したんです」

亜希先生は、うん、うん、と頷いている。

「知里に話したんです。父親の死というモノ。話してもまだ死そのものは解らないですけど。
此処に居る訳じゃないけど、もう、会えなくなったの、二度と会えない、という事が、死と言う事なんだって。
なんとなくでも、解ってくれたらいいんだけど。本当は、まだこんな話はしなくていいと思っていたんですけど…。大きくなるにつれて、自然に理解していけると思ってましたから。
でも、…いつまでも、私が幻想を抱いていてもいけないし」

私自身が信君の死を受け入れていない。
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