元通りになんてできない

今日笑ってくれた。
気を遣ったのかも知れないが。少しは心に変化が出て来ているのかも知れない…。


「幸元君」

いきなりだった、いや、俺が物思いに耽っていたから気がつくのが遅れたんだ。驚いた。慌てて返事をした。

「うわ、は、はい」

「…ごめんね、待たせたでしょう?」

「いや、いいえ。俺が一方的に頼んだだけですから…。
それより、此処でいいですか?
奥に移動しますか?」

「そうね、奥に移動しましょうか…」

「では」

俺はコーヒーを持ち、立ち上がった。

その様子を見ていたのか、どの部屋でも大丈夫です、と声が飛んで来たから、その声の方に、有難うございます、と返して移動した。


鷹山さんのコーヒーが運ばれて来たので、ご飯どうします?と尋ねると、そうね…、ふぅ…、食欲はあまり無いから、と言う。
ならば。
サンドイッチ、摘みましょうか、とサンドイッチを注文した。

程なくして、二人分を一皿に。小さめにカットして持って来てくれた。
なんと…、流石だな。その心遣いが嬉しかった。
さあ食べるぞ、みたいに、通常の大きくカットされたモノよりも、小さい方が話しながら摘みやすいからだ。
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