愛が溢れてる
「あ、もう全部食べ終わったのかな?と思い、こう、袋を持ち上げて、中を覗き込んでみたのですが」


実際には現物を掴まずに、パントマイムで愛実ちゃんは動きを再現した。


その段階でオレには話のオチが見えた。


「そうしたら、袋を傾け過ぎてしまって、クッキーのカケラ達がザザッと滑り落ち、その中の何粒かが私の右目を直撃したのです」


その時の恐怖の体験が蘇ったのか、愛実ちゃんはまたもや顔をしかめた。


「とっても痛かったですー。まつげとかホコリとかとは比べものにならない衝撃でしたー」

「……今度からは気をつけようね」

「はい」


愛実ちゃんは力強く返答した。


「もし、この後痛むようだったら、ちゃんと眼医者さんに行った方が良いよ。肉眼では分からなくても、角膜が傷付いちゃってるかもしれないし」


彼女はコックリと頷く。


……愛実ちゃんてたしか、今年25歳だよね。


ハプニングエピソードが5歳児レベルだよね。


オレも何故だか天然と勘違いされるけど、やっぱ本物のこの子には負けるわ。


「あの…」


すると愛実ちゃんはおずおずと切り出した。


「このこと、皆さんには内緒にしておいていただけますか?」

「え?」
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