BEAST POLICEⅢ
完全に射程圏内に捉えたというのに。

既に人差し指はトリガーにかかっているというのに。

オルロフは動けなかった。

トリガーを引けなかった。

目の前の光景が、あまりにも信じ難いから。

十数メートルは離れているんだぞ?

何の物音も立てていないんだぞ?

さっきまで目の前の相手に、完全に意識を奪われていたじゃないか。

オルロフがとった行動は、トリガーに指をかけただけ。

人間の感覚ならば、絶対に気付かない筈だった。

だが獣ならば。

人間を遥かに超越した鋭敏な感覚の野獣ならばどうか。

そこに発する僅かな殺気に気付き、咄嗟に行動を起こすのではないか。

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