空 - sora -
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「俺も最初はそう思ってた。」

そう言うと黎也先輩は手を止め

コーヒーを一口飲むと話し続けた。


「でも、何事も慣れって大事。
慣れないとやってても苦痛が多いしね?
でも美久ちゃんがこの仕事を
やってて少しでも楽しいとか
そう思えるならそれも成長。
やりがいとか何も感じないまま
この仕事をやってるのなら
長く続かないかもね。」



「違うんです…」



「え?」



私は北海道から夢のために

上京してきたことを職場の誰にも

言っていなかった。

もちろん、黎也先輩も知らなかった。



「私、夢を叶えたくて。」


「夢…?」



そう、私の夢は歌手だった。

小さい頃からずっと夢だった。

自分の歌で自分の声で

人を感動させたいと心の底から思った。

そして高校卒業して

本当は東京の音楽専門の学校へ

行くつもりだった。

でも親も賛成しなかったために

大学へ行く資金が無かった。

だから一年は我慢してお金を貯め

通信で音楽関係の資格を取って

来年には大学へ行くつもりだった。

でも、一人暮らしのために

全然お金が貯まらず

大学へ行くのを半分諦めていた。




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