白雪と福嶋のきょり
再び稼動しはじめた蛍光灯が、柔らかな光と混ざり合う。

「ああ白雪、帰れよ」

思い出した様に一瞬だけこちらを一瞥してまた冊子に戻る福嶋の目は、とても綺麗な伏し目になっていて。

風が描いた線の様に細く程良い長さの睫毛の奥で、微細に動く慧眼があった。

「付き合うわよ」

それは、みんなが見たら興奮のあまり発狂してしまうんじゃないかと思う位福嶋らしくて。

「買い出しなんだろ?」
「うん。何で知ってるの?」
「徳田が言ってた」

交わらない視線の中で、二人分の会話が教室に響く。

閉め切られた窓の向こうから野球部のかけ声が籠って聞こえてくるけれど、何を叫んでいるのかまでは聞き取れない。

緩やかに外界と遮断され柔らかな光に染まる優しい教室。

福嶋と私の緩やかなテンポの会話だけが響く空間。
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