白雪と福嶋のきょり
水面下で囁かれる噂とは違い、誰もが声量を上げてその興奮を撒き散らす。

「お前も大変だな。」
「何がですか」

当然、その興奮の余波は生徒間だけでは止まらず、教師である東雲の耳にも彼の意思とは無関係に届いたのだろう。

「おっ!伝説の男じゃん!」

そうしてクラスから学年、全学年へとこの出来事は脚色や尻尾を付けられて話題のまま広がっていく。

「続くぞ。当分な。」

静謐な声に野次を飛ばしてきた奴を無視して東雲を見た。

何も変化していないすらりとした背中が映った。

「…」

当分というのがいつまでなのか、聞く気にはなれなかった。
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