白雪と福嶋のきょり
「そんな、手伝いますよ」

特に反応を示さなかった俺の横で、白雪がそう当然の様に言うのは俺も、そして恐らく東雲も分かっていた。

けれど、そういうワケにはいかないのが学校というものだ。

「学校の都合で残らせてお前らに万が一の事があったらどうなると思う。」

生徒が夜まで学校に居られるのは文化祭前の一ヶ月間のみ。

其々がきちんと保護者の許可を得て、迎えに来てもらうか必ず集団で下校し、帰宅後に学校へ連絡をするという条件を満たした上で。

「でも、」

それだけ念を押さなければならない学校の立場が分かっていても、このまま素直に帰る事が出来ない白雪は何とか打開策を見つけ出そうと倦いている。


「ふう」

こうなると白雪は長い。そして動かない。

「先生。今から家に電話するので先生から親に話してもらえませんか」


じきに陽が眠りについてしまう空は、物凄い早さで青混じりの黒を迎え入れる。

既にこの部屋の明かりは外へと漏れているだろう。
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