白雪と福嶋のきょり
電気と施錠したことをきちんと確認した後、北校舎から南校舎へと架かる渡り廊下を渡って、青混じりの黒に染まり始めた誰もいない教室を一つずつ通り過ぎていく。

きっと一人だと不気味に感じるその静かさと薄暗さが、今は全然怖くない。

むしろ、均等に並ぶ蛍光灯が鋭く照らす廊下を福嶋と私の足音が交互に響くのが面白くて。

「何笑ってんだ?」

一人で笑う私を不思議に見てくる福嶋にその事を伝えると、平常運転なままなんだそれと返されてしまった。

それでも変わらずに響く足音にまた嬉しくなって、楽しいねと笑った。
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