白雪と福嶋のきょり
「火付けたらすぐ戻ってこいよー!道草してると明日の自由行動は取り止めるからな!」

楽しむイベントな筈なのに何とも恐ろしい事を叫んだ学年主任の先生の声が合図となり、カップルが持つロウソクの明かりが闇へと消えていく。

時々女子の悲鳴が響いてくると、大袈裟だな。と笑う男子と怖くなってきた。と怯え出す女子のきょりが縮んだ様に見えるから不思議だった。

「ねえ福嶋、」
「ん?」
「これをきっかけに本当のカップルになる組出てくるかもね」
「どうだろうな」
「そうなったら素敵じゃない?」

横で上の方をずっと眺めていた福嶋にそう言うと、何故か溜息をつかれてしまった。

「どうしてため息?」
「別に」


結局福嶋は教えてくれなかったけれど、福嶋が誰かを傷つける為に溜息をつくような人じゃないと分かっているから、潔く諦めた。
< 76 / 100 >

この作品をシェア

pagetop