白雪と福嶋のきょり
「もうちょっと待っててくれ。その間消えた所があったらこれで付けてくれ。」

全ての火が柔らかに灯る中ではるか先生が差し出したのはチャッカマンで。

「なんですかこれ。風情が台なしじゃないですかっ」
「あちこちで消えたら風情なんて言ってられねえだろ。」

福嶋も同感だったのかチャッカマンを受け取るとすぐに、持っていたロウソクの火を吹き消してしまった。

「もう。はるか先生も福嶋も」
「ほらそこ消えてんぞ。」

男の人にとっては風情よりも便利さの方が大事な様で、はるか先生も福嶋も何も躊躇うことなくカチリとした音を響かせる。

私は出来るだけ風情が壊れない様に音が響かない様にと、ゆっくりと押したのだけれど。


「ああ、」

同じ音が響いてすぐに灯りだした火に、憂いを含ませた声を一人で零していた。
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