白雪と福嶋のきょり
音もなく灯るその空間に屈むと、近くなった火が、私が生んだ風に踊った。

「この色、なんか懐かしい感じがする」

その後にもう一回。福嶋が生んだ風にそれが踊る。

「そうか?」

決して火を消さない、緩やかな風。

「ほら、夕日みたいでしょ?」

そう言って横を見ると、福嶋の表情が少し緩んでいるように見えた。

ロウソクの火が見せた幻覚かもしれないと思ってしまう程少しだけ。

「なんか、」

その端整な横顔に、薄玉子色のカーテンが鋭い光を和らげて包む教室を思い出した。

「先週の放課後みたい」
「そうかもな」
「でしょ?」

今度は疑問文ではなくて肯定してくれた福嶋に、もしかしたら同じ事を考えていたのかもしれないと思って。

表情筋が緩んでしまった。
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