白雪と福嶋のきょり
自分の口が自分のものではない様に、うまく言葉を紡げない。

「白雪?」

私の様子を伺う様に名前を呼ぶ福嶋の柔らかな声に、音が纏った息しか出てこない。

「ふ、福嶋、」
「ん?」
「あ…よかったねみんな楽しそうで」
「ああ」


”ダメよ。ダメだよ”


私の中で、私の声が私を制止する。

うまく言葉が紡げない事への困惑と、頭の中で何度も制止する自分の声に、福嶋の顔が見れなくなってしまう。


”これ以上一緒にいちゃいけない”


「白雪?」
「…ううん。よかったねみんな楽しそうで」
「…ああ」

喧騒と自分の中で混沌とする困惑が静まるのを待った後、一つずつその灯りを吹き消してゆく。


”戻れなくなる前に 離れなきゃ”




(なに、)

喧騒はもちろん静まったけれど、混沌とする困惑が静まることはなかった。
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