白雪と福嶋のきょり
「で、なあに?これ」
「ン」
福嶋が目線で示した場所、缶の下には一つだけ出来上がった冊子があって、”修学旅行レポート”と謎のイラストが書かれていた。
表紙を捲り課題がぽつりと並ぶ空白の多い紙を何度も捲り、最後は”小論文”。
「出発前にはあんまり見たくないわね」
「修学の為の旅行だからな」
顔を歪め冊子を視界から外す私とは違って、福嶋の表情は平常運転。
私が外した冊子を手に取って何かを確認しながら横を風の様に通り過ぎていく。
さらり、風の音が聞こえた気がした。
(さすがよね)