コールセンターの恋愛事情
松本さんはわたしに視線を向けると、
「ごめんね、あんなところを見せちゃって」

わたしに謝った。

「いえ…」

どう答えればいいのかよくわからなかったので、わたしは首を横に振った。

「蔵野さんとは幼なじみなんですよね?

なのに、どうして…」

「彼に早く独立してもらいたいからよ」

わたしの質問をさえぎるように、松本さんが言った。

「独立、ですか?」

その意味がよくわからなかったので、わたしは聞き返した。

「ごめん、ちょっと頭冷やしてくる…」

松本さんは悲しそうに碧い瞳を細めると、その場から立ち去った。

わたしはこの場から動くことができなくて、彼女の後ろ姿を見送ることしかできなかった。
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