空を照らす向日葵
雨に喜んで見えた中庭を抜けて、立派な靴棚がいくつも並ぶ玄関の前で傘が纏った雨露を落としながら外を見た。
そして、夏の爽やかで冷たい雨の中、たくさんの生徒が傘を回して歩いてくる中で、一人だけ走ってくるコウタを見つけた。
「うっひゃあ、冷えー!」
雨はとても似合っていたけれど、コウタ自慢の絶妙な緩さのパーマが崩れてしまっていた。コウタは何故かびしょ濡れだった。
雨は前日の夜から降り続けていたのに、傘を持っていなかったんだ。
「どうしたの」
使わなかったタオルを鞄から取り出してコウタへ差し出したのに、僕に気付いていなかったコウタは雨露を周囲に撒き散らした。
僕の顔にもかかって、擽ったかった。
「お。よ!さんきゅ。」
「傘は?」
「歩いてたら折れたんだよ。」
大袈裟なくらいに髪の毛をくわくわと拭くから、タオルからはみ出た雨露がまた顔にかかった。
歩いているだけで折れる事なんてまずない。何か他の理由があるんだろうなと分かったけれど、特に聞きはしなかった。