最後の会話
 
1個下の大好きな彼氏。決してイケメンってわけではなかったけれど、私にとっては大切で大好きな存在だった。


「お前のことはすげー好きだけど──」


だけど私はどうしようもない照れ屋で、恥ずかしがり屋で、いじっぱりで、素直に好きと伝えたのは、告白されたそのときだけ。


「今は部活に集中したいんだ。」


嫌いじゃないよ。また今度ね。

そんなことばっかり。

それをこんなに後悔する日がくるなんて思わなかった。


「残るは高校最後の春の大会だけだし、強豪校って看板に、部長の俺が泥を塗るわけにもいかない。」


携帯の文字を見るのが辛くって、苦しくって。

昨日の大会が終わるまでは、何も変わらなかったのに、どうしてこうなっちゃったの?


「だからごめん。
……別れて。」


涙が溢れて、文字を打つ手が震えた。

どうしようもない悲しみが広がって、耐えられなかった。


「それじゃ、しょうがないよね。部活がんばってね。さよなら。」


いつも通りのそっけない文章。こんなの送りたくない。それなのに指は勝手にどんどん動いて──。


送信しましたの文字が液晶に浮かんだ。


最後までいつも通り、可愛げのない私。

大好きなのに、離れたくないのに。


大好きだから、いかないで


最後までたったこれだけのことが言えないで、どうしようもない虚無感だけが残った。

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