天使のはしご
十八の終わり
あれから、一週間と経たずに、彼は来た。
前と同じ様に何も持たずに。
「こんにちは」
(こんにちは)
私と彼は同じタイミングで小さく会釈をした。
「今日は、ちょっと暑いな」
彼はいつも階段を使ってここまで登ってくる。
私の家は車も登れるように坂もあるのだけれど、三度折り返さなければならなくて、すごくきつくて長い。
ある程度の幅はあるのだけれど、ガードレールや手すりもないので、安全面ではすこし不安。
だから小学生や散歩がてらに景色を眺めに来る人々は、私の家が建つ前からある階段を使ってくる。
けれど、その階段も長く、きつい。
だからなのか、ここに来る人はどの季節でも少し汗ばんでいる。
それは彼も例外ではなく、少し額が光っている。
(今日は、雲がないね。)
最近は少し曇り気味だった空も今日は、青一色で。
「太陽が、丸見えだよ」
彼が額の汗を手の甲で拭きながら、空を見た。
私もつられて、窓の中から空を見た。