天使のはしご




「昨日の放課後の事なんだけどさ、」

お互い、なんの接点なく共通点も分からないけれど、彼がゆっくりと、静かに出す言葉たちは全てがキラキラしていて、私は何も出さずに、ただ、頷いたり、驚いたり、笑ったりしながら、彼の言葉たちを感じていた。



「そしたら、そいつがさ、彼女の」


彼は偶にしか私と視線を繋げない。

いつも街を見ながら、話す。

一瞬だけでも繋がると、少し恥ずかしそうに、また視線を街に移す。


「勇気だけは凄いと思わない?」


問いかけながら視線を繋げてくれた彼の表情が、何故か不思議なものを見た様なものになって。


「なんで、微笑んでんの?」

(え?)

「なんかさ、いっつも微笑んでるよね」

彼を見ている時の自分の表情は見れないので、微笑んでると言われても分からなくて。


(私、微笑んでた?)

「うん。今も」




満面の笑みでそう答える彼を見ると、また口が緩んだ。


(あ、)

(微笑んでるって、口が緩んでる時のこと?)

「ほら、また」


自分の小さな推理が正しいと分かった途端、私は恥ずかしさのあまり顔を両手で覆った。

軽く覆っただけでも、熱さが伝わってきて、また恥ずかしくなった。
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