天使のはしご
「はーい。」
チャイムを鳴らした後、ドアホン越しに『どちら様ですか?』と聞かれる事なく、明るい返事が聞こえてからすぐに真っ白に塗られた大きな玄関扉は開かれた。
「あら?どうもこんにちは。」
そう言って丁寧に外靴に履き替えて出迎えたのは、『上品で優しい奥さん』が似合う綺麗な女性だった。
三十代半ばに見えるその女性は、チョコレートモカ色の髪を後ろで一つに束ね、濃くも薄くもないまさに上品なメイク、胸元には羽根がついたピンクゴールドのネックレスを小さく光らせている。
服装は薄茶色でドレープ入りの半袖チュニックに細身のスキニー。
彼女位の年齢からすれば素晴らしすぎるスタイルだ。
「どちら様ですか?」
彼女は優しく微笑む。
彼女にそっくりな顔で。
「えっと・・・・あ、あの、えっ」
しまった。
僕と彼女には接点がない。
それどこれか彼女の名前も知らない。
僕たちの関係は、なんだ?