恋の六法全書~姫は王子のキスで~
求くんからのちょっとしたデートの誘いを無下にしたくなかった私は、彼と一緒に、マンションの目の前にある浜辺へとやって来た。秋のうそ寒い風が潮の香りを含んで、私の着ているワンピースのスカートの部分を膨らませる。
「ちょっと私、海に足を浸けちゃおうかな」
私は砂浜に腰を下ろすと、スニーカーを脱ぎ、靴下も脱いだ。
「うっかり海の中で転んで、ずぶ濡れになったりでもしたらまずい。風邪引く」
そんな私の行動を、求くんが長年の付き合いの観点から、制止してくる。
「私、もうそんな子供じゃないよ」
求くんの焦り具合が、私には少しおかしかった。