竜宮の御使い
…とりあえず、冷静になろう。そしてこの体制も、このベッドって場所もよくない気がする。

「あの、いくつかお二人に聞きたい事があるのですが。」

おずおずと聞いた私に二人は極上の笑みを向ける。

「なにか?」

「何でも聞いてくれて構わない。」

その雰囲気に圧倒されながらも私は言葉を続けた。

「まず、私が龍神様から言われた龍宮の御使いとはどういった存在なのでしょうか?」

どこぞの物語で見た、国を救うための勇者とか命をささげるための姫神子とかは勘弁してほしい…。そんなスキル持っていない。

「…それを説明するにはまず我が国に付いて知っておく必要がある。」

シエンさんはそう言って私の手を離した。シオンさんもそれに倣うように私の手を離す。
 やっと解放された両手を私はおずおずと布団の中に戻した。さっきから手汗が半端ない。

「この大陸には四つの国があります。玄武が治める北の国。白虎が治める西の国。朱雀が治める南の国。そして龍が治める東の国です。今アヤノが居るのは東の国の首都。その最深部にある龍水城の一室ですよ。」

シオンさんの言葉を私はただ黙って聞いていた。玄武に朱雀に白虎…前の世界にもあったものだ…。ここはもしかしたら、全くの別次元というわけではないのかもしれない。

「この国の王は代々双子が治めている。王位を継ぐ条件の基本は双子である事だ。現代の王は私とシオンが務めている。」

「二人が…お、王様?!」

これにはさすがに驚きを隠せなかった。目の前の二人が王様!?確かに…すこし…いやかなり只者ではないオーラを感じたけど…王様って…!!
って言う事は…私王様に裸見られたあげく御姫様だっこまでしてもらった訳?!!おわぁぁぁ!最悪だぁ!
さんじゃなくて様付けないと…。っていうか名前で呼ぶのってもしかして不敬罪!?
 心の中で最悪に悶えているとアメジストの双眸と眼が合い慌てて思考を戻す。そして、勢い良く頭を下げた。

「申し訳ありません!…私お二人が王とは知らずに数々の無礼を…どうかお許しください。」

深く下げた頭をゆっくりと大きな手が撫でる。サッと見上げると、シオン様が子どもをあやすようにそこか楽しげな表情で私の頭を撫でていた。

「ふふふ。気にする必要はありません。アヤノは私たちに何をしてもいい。誰も咎める事はありません。」

「は…?」

「この国に置いて唯一我らと同等の権力を持つのはアヤノしかいない。」

「え?…王様と同等…?」

戸惑う私をよそに二人は双子ならではの息の合い様で話を進めて行く。

「そう、アヤノは私たちの唯一の番…。最愛の妻。」

「妻!?」

「アヤノはこの国の王妃となり母となる者。」

「はぁぁっぁ?!なんで?!」

「先ほども説明しましたが、双子でなければ王位は継げません。私たちはこの特異な体質
のため同種族の女性とは子が成せないのです。そこで、龍神様から私たちが成人すると龍宮の御使いとして私たちの妻となる番の女性を召喚していただけるのです。御理解いただけましたか?」

シオン様が私の手を取ってニコリと首をかしげた。

御理解?!ご理解なんてできるわけないでしょうが!!?
< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop