竜宮の御使い
「だって…こんなの可笑しいでしょ?元の世界では私は死んだ事になってて…目が覚めたら知らない人たちに囲まれてて…。何をどうしたらいい?何も分からない…。」
私の心の痛みや不安は声となってシオン様とシエン様の心に突き刺さる。
「「アヤノ…。」」
「私…本当は梶彩乃って言います…。龍神様がこの世界では龍宮の御使い・アヤノとして生きろって言った…。けど、私は梶彩乃なの。彩乃の私は…死んじゃったの?この世界には必要ないの?必要なのは龍宮の御使いっていう王の妃になる女だけ?」
遂に私の涙腺は崩壊した。
子どもの様に嗚咽を上げて泣きじゃくる私をシオン様が抱きしめ、それをさらにシエン様が抱き寄せた。
「アヤノ…。私たちは王の妃となり子を産むための女が必要なわけでも、龍宮の御使いが必要なわけでもない。私たちにはアヤノが必要なんだ。」
シエン様は優しく私の頬を伝う涙をぬぐって行く。
「私たちは初めてあなたを見た時、もう恋に落ちてしまいました。私も初めは、アヤノが龍宮の御使いで決められた番だからだと思いました。でも、5年の月日を過ごして、私は龍宮の御使いとしてではなく、見る事も触れることもできないアヤノという一人の女性に恋をしました。」
シオン様が私を抱きしめる手を緩め、三人の視線がしっかりと重なる。
「こんなに小柄で美しい女を初めて見た。」
シエン様がこめかみに優しく口づける。私小柄じゃないのに…。
「あなたのコロコロと表情を変える愛らしい姿は見ているととても幸せな気持ちになります。」
シエン様とは逆のこめかみにシオン様が口づける。そこからは二人のキスの雨だった。
「辛い時は何時でも何でも話してほしい。アヤノは独りでは無い。」
「寂しい時は何時でも側に居ます。」
「失ったモノの代りにはなれないが、同じ悲しみを背負い命ある限りアヤノが幸せになれるよう努力する。」
「アヤノの生活や友人、貴女が思うすべての人々を失った悲しみは私たちが一生を持って癒しています。」
米神、頬、額、瞼。唇以外の顔のほぼすべてに言葉と共に優しい羽根の様なキスが落ちてくる。
そして、いつの間にか私の涙は止まっていた。
感情をぶちまけてしまったが、溜まっていたものをすべて吐き出し少しずつ冷静になって来くると自分が置かれている状況にハッとした。
シオン様の膝に抱かれ、それを横からシエン様が抱き寄せくすぐったいくらいに顔中にはキスの雨。
「あ、あの…。ちょっと…ストッ…プ。」
鼻をすすりながら私が言うとシオンとシエン様はゆっくりとキスを止めた。しかし、体制はそのまま、どうやら私を離すつもりは無いらしい。
「我らのことを許してくれるのか?」
「不安な思いはありませんか?罵声でもなんでもあなたの気持ちが軽くなるまで私たちは受け入れます。」
同じ顔の美丈夫が同じように心配そうに眉を寄せて覗きこんでくる。その姿が、何故か可笑しくて…どこか可愛いらしくて、思わず笑みがこぼれた。そして、心が淡くうずいた。
「…沢山酷い事をいってごめんなさい。でも…すこし楽になりました…。」
私の言葉に二人の緊張が少し和らぐ。
「…私、この世界のことまだ何も分からないです。シオン様の事もシエン様の事も…。だから、お二人の近くで少しずつこの世界のことを、この国のことを学んでいけたら…。そしてシオン様とシエン様をもっと知っていけたらいいな…って思っています。…そこからでもいいですか?」
心なしか朱色に染まる頬を感じながら二人に尋ねる。その瞬間、二人は嬉しそうに笑った。
「「もちろんだ(です)。」」
そして、やっぱりユニゾンの声に私はようやく肩の力を抜いて笑う事が出来た。
私の心の痛みや不安は声となってシオン様とシエン様の心に突き刺さる。
「「アヤノ…。」」
「私…本当は梶彩乃って言います…。龍神様がこの世界では龍宮の御使い・アヤノとして生きろって言った…。けど、私は梶彩乃なの。彩乃の私は…死んじゃったの?この世界には必要ないの?必要なのは龍宮の御使いっていう王の妃になる女だけ?」
遂に私の涙腺は崩壊した。
子どもの様に嗚咽を上げて泣きじゃくる私をシオン様が抱きしめ、それをさらにシエン様が抱き寄せた。
「アヤノ…。私たちは王の妃となり子を産むための女が必要なわけでも、龍宮の御使いが必要なわけでもない。私たちにはアヤノが必要なんだ。」
シエン様は優しく私の頬を伝う涙をぬぐって行く。
「私たちは初めてあなたを見た時、もう恋に落ちてしまいました。私も初めは、アヤノが龍宮の御使いで決められた番だからだと思いました。でも、5年の月日を過ごして、私は龍宮の御使いとしてではなく、見る事も触れることもできないアヤノという一人の女性に恋をしました。」
シオン様が私を抱きしめる手を緩め、三人の視線がしっかりと重なる。
「こんなに小柄で美しい女を初めて見た。」
シエン様がこめかみに優しく口づける。私小柄じゃないのに…。
「あなたのコロコロと表情を変える愛らしい姿は見ているととても幸せな気持ちになります。」
シエン様とは逆のこめかみにシオン様が口づける。そこからは二人のキスの雨だった。
「辛い時は何時でも何でも話してほしい。アヤノは独りでは無い。」
「寂しい時は何時でも側に居ます。」
「失ったモノの代りにはなれないが、同じ悲しみを背負い命ある限りアヤノが幸せになれるよう努力する。」
「アヤノの生活や友人、貴女が思うすべての人々を失った悲しみは私たちが一生を持って癒しています。」
米神、頬、額、瞼。唇以外の顔のほぼすべてに言葉と共に優しい羽根の様なキスが落ちてくる。
そして、いつの間にか私の涙は止まっていた。
感情をぶちまけてしまったが、溜まっていたものをすべて吐き出し少しずつ冷静になって来くると自分が置かれている状況にハッとした。
シオン様の膝に抱かれ、それを横からシエン様が抱き寄せくすぐったいくらいに顔中にはキスの雨。
「あ、あの…。ちょっと…ストッ…プ。」
鼻をすすりながら私が言うとシオンとシエン様はゆっくりとキスを止めた。しかし、体制はそのまま、どうやら私を離すつもりは無いらしい。
「我らのことを許してくれるのか?」
「不安な思いはありませんか?罵声でもなんでもあなたの気持ちが軽くなるまで私たちは受け入れます。」
同じ顔の美丈夫が同じように心配そうに眉を寄せて覗きこんでくる。その姿が、何故か可笑しくて…どこか可愛いらしくて、思わず笑みがこぼれた。そして、心が淡くうずいた。
「…沢山酷い事をいってごめんなさい。でも…すこし楽になりました…。」
私の言葉に二人の緊張が少し和らぐ。
「…私、この世界のことまだ何も分からないです。シオン様の事もシエン様の事も…。だから、お二人の近くで少しずつこの世界のことを、この国のことを学んでいけたら…。そしてシオン様とシエン様をもっと知っていけたらいいな…って思っています。…そこからでもいいですか?」
心なしか朱色に染まる頬を感じながら二人に尋ねる。その瞬間、二人は嬉しそうに笑った。
「「もちろんだ(です)。」」
そして、やっぱりユニゾンの声に私はようやく肩の力を抜いて笑う事が出来た。