俺様男子の克服方法(短)


美音をカラオケ店に見送って、時間つぶしに近くのカフェに入った。
カフェラテを飲みながら暖かい店内で通行人を眺める。
一杯ごとにため息を吐きながら外を見ると憎らしいくらい晴れている。
あいつのために悩んでいると思うと馬鹿馬鹿しくなってくるわ。
四回目のため息は思わず飲み込んでしまった。
椅子から落ちそうになりながらテーブルに身を隠す。
心臓が暴れてうるさい。
女の子の熱い視線を浴びながら、あいつが歩いてきたのだ。
見つけた瞬間に喜んだ自分が太陽よりも憎々しい。
テーブルの下で飲み込んだ息を吐き出した。

ちょうどカフェラテを飲み終わった頃、美音からGOサインが出た。
鉛のように重い足を引きずってカラオケ店に入る。
305の取っ手を掴むとそこから心臓が動き出したかのように緊張する。
努めて明るく、何もなかったかのようにしてればいい。
うろたえるな。

「遅くなってごめん」

一番に、俺様と目が合って次の言葉を発せなくなった。

「久しぶりだね礼子ちゃん。俺の隣どうぞ」

義美さんがにっこりと微笑んでくれたので、ホッとしながらソファに座る。
あいつは何も言わない。
熱唱していた美音はにやにやと私達を見た。
美音が歌い終わると聞き慣れたイントロが流れる。
俺様がマイクを持った。

「礼子の好きな歌手じゃん!」

美音が嬉しそうに私にくっついて座る。
……だからなんだというんだ。
この歌手は好きだけど、正直今聞くのは微妙だ。
しかもラブソング。
俺様がスッと息を吸った。

「ひゃ~上手い! 誠人さんって何でもできるんだ」
「だからあんな性格なんだよ」
「なんでお兄ちゃんと友達なんだろうね」
「さあね?」

美音が私を見つつ、義美さんと会話している。
魅入られたように俺様から目を離せなかった。
高い音を歌う時は切れ長の目を細める。
かっこつけているわけじゃないのに、自然な動きひとつひとつが色っぽい。
……やっぱり、この気持ち嘘じゃないんだ。
気づけば尚更辛くなる。
苦しくなる。
自覚しながらもその後数十分話しかけられなかった。
俺様がトイレに立って、美音がドリンクを取りに行き、義美さんと二人っきりになった。
義美さんは入れていた曲を歌わずにマイクを置いた。

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