俺様男子の克服方法(短)
好きな女には一途
「いやはや、無事くっついてよかったね」
「おかげ様で。義美さんにもお礼言っといて」
「え? お兄ちゃんはあれ趣味でやったんだよ。性悪だから」
「また冗談を~」
「いや、マジで。って、まだお兄ちゃんが理想とか思ってんの」
「あー…うん、理想ではあるかな。好きじゃないけど」
「随分迷いながら言うようになったね。誠人さんにべた惚れなんだ」
「なっ、ちが、う!」
「照れるな照れるな。……三次元でも俺様はイケる、ってことか」
美音はメモを書く動作をして、舌を出した。
うん、最初から観察対象だって知っていたよ。
でもね、会えたのは美音のおかげだから、
「ありがとう」
「いやいや、まだこれから。俺様と付き合うとどうなるのか見させてもらうよ」
……そうなるよね。
お互い紙コップからお茶を飲んだ。
「今日、誠人さん来るんでしょ。私帰るね」
「うん、また来週」
「良い夜を」
「ぶっ、なん……美音!」
「はいはい。退散しますよ」
美音が食堂を去って、しばらくすると女の子の黄色い声の大合唱。
もう聞き慣れたので無視してお茶を啜った。
「聞こえてんだろ。迎えに来いよ」
頭を叩かれて再びお茶を噴き出しそうになった。
「なんで私が行かなきゃなんないのよ」
「ここに来る間に浮気してもいいのかよ」
「するの?」
「……さあな?」
少し前なら「するよ」って言われていたと思う。
ほんの少しだけど柔らかく、優しくなった気がする。
俺様は飲み終わった紙コップを何も言わずに取ると空いている手を私の指に絡ませた。
紙コップを捨てるだけなのにその動作さえもきまって見える。のは、決して贔屓目ではないと思う。
女の子達の羨望の眼差しが痛い。
でも、繋いだ手がそれを和らげてくれる。
今日は珍しく車で来ていて、助手席のドアを開けて迎え入れてくれた。